Gilletteの鬱を越えて · 日本語版 · 第10番
Gillette:夜
Gillette 20 — 書記ナンド
そう、あの夜も私たちはふたりきりだった。ふたりだけ。私と、千の戦いをともにした相棒 — 一度も期待を裏切らず、いつも私にいい格好をさせてくれたやつだ。付加価値であり、その役目ゆえに永遠に称えられてしかるべき存在。
だがご注意を — 犬の話ではない。たとえ名前がDの字で始まるとしても。あはははははは。
この先、あといくつの出会いがあるのだろう。いくつの国、混み合った場所と空っぽの場所。だがもう目を閉じる時間だった。その日の感情はたくさんあった。そして泣くことは、もういない人たちにありがとうを言うやり方になっていた。
午後、墓地の近くで出会ったアジア人の花売りの姿が、1990年代の記憶へ私を連れ戻した。
ティハニーは若く美しい女で、ハノイの娼館の中にいた。その日、彼女は私をそこへ案内してくれた — 自分の職場を見せるために。彼女にとっては、ニューヨークのOne Liberty Plaza 54階にあるビジネスセンターを見せるのと同じことだった。彼女の目に違いはなかった。
彼女は誇らしげだった。その場所に満足していた。実力で勝ち取り、店の先代の主だった母親を打ち負かしたのだ。理想的な家族構成と言えるかもしれない — どこかの出版社の社員たちにとっては。
彼女は私の腕を取り、座らせ、レモンティーを出して、こう言った。
ナンド、いつも覚えておいて — 戦争の中の攻撃は、すぐの応答なんて決して求めていないの。感情的な応答も。反射的な応答も。ただ待つこと。理性と論理にかなったふるまいの娘である、待つということ。そこでは勝利だけがあなたの味方。快楽と喜びをくれるのは勝利。それに、たいてい代価を求めない。彼女は愛のためにそうするの。私たちが、あなたみたいな男にするのと少し似てる。
深い考察だった。消化するのに時間がかかった — 地上でいちばん取るに足らない女の知性にさえ、いつも私の無知のほうが勝ってしまうことを思えば。
私は笑みを浮かべはじめた。別の部屋から妻が、何を笑っているのかと訊いた。何を見たのかと。
ただの幽霊だ、と答えた。
ある夜の中の幽霊。
ナンド
