The Gillette Companyサーガ · 日本語版 · 第10番
Gilletteの鬱
一生をひとつのブランドの内側で過ごすと、アイデンティティはその名前の力で増幅される。ただの自分であることをやめる — どこへ行こうと、どの部屋に入ろうと、会社そのものになる。
そしてある日、それは終わる。定年、買収、リストラ、背中をぽんと叩くように礼儀正しい早期退職の優遇。風向きが変わるが、それが正確にいつなのかは誰も教えてくれない。
鬱がやって来るのはそのときだ。金が止まるからではない。社会がもう彼を認めないからだ。
同じ部屋に入っていく。だが部屋はもう振り向かない。かつてあらゆる扉を開けた名前は、いまは何も開けない。その名前が彼のものであったことは一度もないからだ — 借りものだった。社員証が効くあいだだけ貸し出されていたのだ。
そして、誰も声に出して言いたがらない細部がここにある。「職業」の欄には、会社員、販売員、代理人、管理職と書かれるだろう。だが会社の名前が書かれることは決してない。
他人の名前の内側で人生を築くのに費やした何十年。そしてその名前は、紙の上でさえ、あなたより長くは残らない。
注:GILLETTE NARRATIVE。所有者はただ一人。
フェルディナンド
