Wall Streetのダイナマイト

Wall Street Dynamite — Gillette From Wall Street, chapter 14

Wall Streetから見たGillette  ·  日本語版  ·  第14番

Wall Streetのダイナマイト

Wall Streetサーガ

爆薬を怖いと思ったことは一度もない。怖かったのは人間だけだ。

ダイナマイトは、少なくとも正直だ。導火線に火をつける。何かがもうすぐ消えるとわかっている。

人間は違う。微笑む。握手を求めてくる。拍手する。祝ってくれる。

そして20年かけて、こちらの足もとに静かに地雷原を築く。

奇妙なのは、若いうちは誰もこれを教えてくれないことだ。

教わるのは努力。規律。忍耐。犠牲。まっとうな文明の聖なる美徳。

だが、世界は事実ではなく解釈によって支えられているのだとは、誰も警告してくれない。

ある男が成功する。10人が彼を天才と呼ぶ。

同じ男がすべてを失う。同じ10人が、あいつは最初から詐欺師だったと気づいた。

変わったのは風向きだけだ。

私はずいぶん遅くなってから学んだ。評判は借り物だ。人格は自分のものだ。

前者は朝食の前に消えることがある。後者は破産しても生き残る。

ほとんどの人は、奪われうるものを守り、奪われえないものをおろそかにして、一生を費やす。

幻想を売っているのなら、並外れたビジネスモデルだ。

ある朝、目が覚める。精神的にではない。哲学的にではない。肉体的にだ。

歯を磨く。コーヒーを淹れる。外を見る。すると突然、認知の建造物がまるごと崩れ落ちる。

新しい真実を発見したからではない。古い嘘を信じるのをやめたからだ。

政治家は残る。専門家は残る。制度は残る。予言者は残る。

億万長者は残る。テレビは残る。インターネットは残る。市場は残る。

すべてが残る。その幻覚に参加するという、こちらの同意を除いて。

厄介事が始まるのは、そこからだ。

社会は何でも許すからだ。失敗。借金。離婚。狂気。犯罪でさえ。

だが、決してたやすくは許さないものがひとつある。許可を必要としなくなった人間だ。

承認を求めるのをやめた瞬間、いくつもの産業がまるごと客をひとり失う。

是認を求めるのをやめた瞬間、いくつもの階層がまるごと目的を失う。

アイデンティティを求めるのをやめた瞬間、いくつもの部族がまるごと新兵をひとり失う。

その時点で、人々は落ち着かなくなる。ひどく落ち着かなくなる。自由は伝染するからだ。恐怖よりもはるかに。

怯えた男は、もうひとり怯えた男を生む。自由な男は不確かさを生む。

自由な男が次に何をするか、誰にもわからない。当の自由な男にさえ。とりわけ本人には。

だからどの文明も、ひそかに、予測のつく人間を好む。

予測のつく消費者。予測のつく有権者。予測のつく経営幹部。予測のつく反逆者。予測のつく革命家。

予測のつく革命は、これまでに発明された最も安全な投資だ。

本物のダイナマイトは別のものだ。それは考えだ。たったひとつの考え。

頭に入りこみ、立ち去ろうとしない考え。受け入れがたい問いを発する考え。

それまでの答えをことごとく疑わしく見せる考え。

そして、ひとたびその考えがやって来たら、もう戻れない。

建物は立ったままかもしれない。家具は手つかずのままかもしれない。書類はまだフォルダーのなかにきちんと収まっているかもしれない。

だが土台はもうない。爆発はすでに起きていた。音もなく。内側で。

そして何より恐ろしいのは? それを聞いたのが自分だけだということだ。


フェルディナンド・フレーガ
BLADEFREGA
ダイナマイト