父は一度も去っていない。

コミュニティのサーガ · 日本語版  ·  N. 03

父は一度も去っていない。


部屋を後にする人がいる。そして方向を残していく人がいる。前者は消える。後者は残る。長い年月、私は遺産とは財産や不動産、保存し受け渡すべき品物の問題だと信じていた。時とともに、本当の遺産はずっと見えにくいものだと理解した。それは戸棚の中にはない。引き出しの中にはない。書類の中にはない。ふるまいの中に住んでいる。父は私に公式を残さなかった。手引き書を手渡さなかった。人生の詳細な地図を用意してくれなかった。説明するのがずっと難しい何かを残してくれた。世界に在るためのひとつの流儀。若い頃、私にはそれが見えなかった。息子が自分の父親をはっきりと見ることはめったにない。当たり前のものと思っている。永続する存在、ほとんど自然の法則のようなものと見なしている。海のように。空のように。季節の移ろいのように。研究せずに眺めている。理解せずに聞いている。気づかぬまま真似ている。やがて、すべてが変わる年齢が来る。何年も前に口にされた言葉が戻ってくる。仕草が違う意味を帯びる。沈黙さえ新しい声を得る。私たちが先を行った人を本当に知り始めるのは、そのときだ。父は私に責任の価値を説明しなかった。実践していた。そしてその違いは巨大だ。人は教えられたことをほとんど覚えていない。生きられたことは、いくらでも覚えている。男が困難な約束を守るとき、誰かが見ている。

責める相手を探さずに敗北に向き合うとき、誰かが見ている。拍手を受けることなく自分の務めを続けるとき、誰かが見ている。その誰かは、しばしば息子だ。上の空に見えるときでさえ。遠くにいるように見えるときでさえ。分かっていないように見えるときでさえ。見ている。そして、しまい込む。大人になってから下した決断の多くは、はるかに遠い歳月に根を下ろしている。本の中で生まれたのではない。会社の中で生まれたのではない。研修の中で生まれたのではない。一軒の家の中で生まれた。一つの家族の中で。当時は普通に見え、今では並外れたものだったと分かる、ふるまいの数々の中で。時間が教えてくれたことを一つ覚えている。どんな息子も、遅かれ早かれ、思いもしなかったやり方で父親に似ていることを発見する。それは突然起こる。会話の最中に。問題に向き合いながら。ある一言を口にしながら。決断を下しながら。突然、何かに見覚えを感じる。表情。構え。反応。そして理解する。ある種の存在は、決して本当に遠ざかりはしないのだと。形を変える。それだけだ。何年ものあいだ、私はさまざまな国を渡り歩いた。さまざまな文化。さまざまな言語。世界のあらゆる場所から来た人々と働いた。それでも驚くべきことを発見した。どこにでも同じ郷愁がある。

どこにでも、先を行った人たちへの同じ敬意がある。どこにでも、模範を残してくれた誰かに恥じない自分でありたいという願いがある。言葉は変わる。名前は変わる。地理は変わる。だが、その思いは同じままだ。なぜなら、すべての人間は誰か他の人を通ってこの世界に来るからだ。誰もゼロから始めない。私たちはみな、何かの続きだ。一つの物語の。一つの家族の。私たちの誕生よりずっと前になされた一つの選択の。時とともに、人をその持ち物で測らないことを学んだ。その人が残すもので測る。そして残すものは、残そうと計画していたものとほとんど一致しない。父親はキャリアを築いているつもりでいる。だが、残すのはおそらく原則だ。安心を残すつもりでいる。だが、残すのはおそらく勇気だ。答えを残すつもりでいる。だが、残すのはおそらく答えの探し方だ。これが継承の見えない部分だ。いちばん重要な部分。いちばん強靭な部分。他のすべてが擦り切れたときにも生き続ける部分。多くの人が忘れられることを恐れる。古い恐れだ。深く人間的な。だが私は、別のかたちの永続が存在すると信じている。彫像のそれではない。写真のそれではない。記念碑のそれではない。本物の永続は結果の中に生きる。続いていく善の中に。

真似される尊厳の中に。手から手へ渡る責任の中に。別の人格を生む人格の中に。父はまさにそこで生き続けている。結果の中で。思い出としてではない。存在として。ときどき、つらい日には、どの決断を下すべきかと自問している自分に気づく。どの道を行くべきか。どの重荷を受け入れるべきか。どの責任を引き受けるべきか。そしてほとんどいつも、答えはとても古い場所からやって来る。住所のない場所。地理のない場所。記憶と感謝でできた場所。声は聞こえない。顔は見えない。だが、ひとつの方向が分かる。それで足りる。なぜなら、結局のところ、去っていく人がいるというのは本当ではないからだ。ただ、私たちの前を歩くのをやめるだけだ。私たちの内側を歩き始める。だから私は、父が去ったとは言わない。別のやり方で旅を続けていると言う。私の決断の中で。私の言葉の中で。私の過ちの中で。私の責任の中で。他人を扱う私のやり方の中で。約束を守る私のやり方の中で。時間に向き合う私のやり方の中で。そしてこのすべての何かが生きているかぎり、父の一部は私の傍らを歩き続けるだろう。静かに。本物の父親たちがいつもそうしてきたように。


Ferdinando Frega
Gillette Man ⚔️

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