Gillette、欠けたピース · 日本語版 · No. 12
Gilletteの直観
先取り
心の十の部屋
誰もが、自分で選んだわけでもないのに住んでいる家がある。
住所はない。どの地図にも載っていない。それでも、実際に暮らしたどんな場所よりもよく知っている。なかには十の扉がある。
気づかないまま、毎日開けている扉もある。
自分には関係ないというふりをして、鍵をかけたままの扉もある。
そして、自分で建てたわけではないのに、なぜか内に抱えている部屋もある。これは理論ではない。
棚でほこりをかぶっている心理学の手引書でもない。
この十の部屋をひとつずつ、たいていは自分がどこにいるのかも知らずに通り抜け、いま、肩にいくらか歳月を重ねて、体験したとおりに描こうとしている一人の男の記録だ。
十の扉。
私はすべて開けた。
好奇心から開けたものもある。
しぶしぶ開けたものもある。
もう引き返せなくなってから、ようやく開けたものもある。
これらの部屋に見覚えがあるとしたら、それが私の物語を語っているからではない。
どこか深いところで、あなたの物語をも語っているからだ。
フェルディナンド
直観 — 先取り
女たちは—最初に、そして女たちだけが—いつも私に尋ねた。
「どうしてわかったの?」
その答えには、いつも居心地の悪い思いをした。
本当のところ、わかっていたわけではないからだ。
見えたのだ。
一瞬だけ。
山の向こうの稲妻のように。
直観とは、理性がずっとあとになって理解するものの、ひと足早い到着だ。
身を乗り出す間もなく開いて閉じる、ひとつの窓だ。
多くの人は、それを天賦の才だと信じている。
私は、聞くことの一つのかたちだと思う。
おそらくは、いちばん稀なかたち。
自分の内側にさえ、沈黙を必要とするからだ。
世界は絶えずしゃべっている。
人も絶えずしゃべっている。
沈黙さえもしゃべる。
直観は、他人が聞き流すものを聞きとれるようになったときに生まれる。
声の調子の変化。
合わなかった視線。
ひとつのためらい。
色を変える気配。
隠れようとする真実。
直観は超自然のものを見るのではない。
すでにそこにあるものを見る。
ほかの誰よりも先に。
だからしばしば、居心地が悪い。
誰もがまだ正反対のことを信じこんでいるうちに、やって来るからだ。
そして、正しいのが早すぎた者を、誰も許さない。
だが、直観を予感と取り違えないようにしよう。
直観は私たちの隣を歩く。
予感は頭上を通り過ぎる。
一方は、聞くことから生まれる。
もう一方は、断りもなくやって来る。
一方は、あなたのものだ。
もう一方は、あなたを通り抜けていく。
そしてしばしば、制御できない。
フェルディナンド
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